「ネット通販で買ったパンツ、履いてみたら殿様みたいに裾が長かった…」
「お直し専門店に行くのは遠くて面倒くさい。近所のクリーニング屋さんでついでに頼めたら楽なのに」
そんなふうに思ったことはありませんか。実は、私たちクリーニング店でも裾上げを承っているお店は意外と多いのです。わざわざ遠くのリフォーム店に行かなくても、いつものYシャツを出すついでにズボンを預けられたら、時短にもなりますし一石二鳥ですよね。
でも、ちょっと待ってください。クリーニング店は「お直しの専門店」ではないため、頼み方を間違えると「思ったより短くなった」「イメージと違う仕上がりになった」という失敗が起こりがちです。
毎日カウンターでお客様の衣類をお預かりしているクリーニング店主の私が、クリーニング屋で裾上げの持ち込みマナーと、知っておくべき料金や日数のリアルな裏側をお話しします。
- クリーニング店ならどこでもOK?「工場直営」か「外注」かで変わる料金と仕上がり日数
- ジーンズ800円、スーツ1200円?アイテム別・仕上げ方(シングル・ダブル)の「お直し料金」相場表
- 「明日履きたい」は要注意!クリーニング店の裾上げにかかる平均期間と急ぎの裏技
- 試着室がない店がほとんど!失敗しないための「股下採寸」と「クリップ留め」の持ち込みマナー
- 新品のジーンズをそのまま出すのはNG!プロが教える「縮み」計算と事前の「水通し」の必要性
- 「たたき」と「まつり」って何?知らないと恥をかくズボンの裾上げ用語と正しい選び方
- 自分でやった「裾上げテープ」が剥がれた!糊(のり)がベタベタの状態でも店で直してくれる?
- 「あと2センチ伸ばしたい」は可能?折り目の跡(線)が消える素材と消えない素材の境界線
クリーニング店ならどこでもOK?「工場直営」か「外注」かで変わる料金と仕上がり日数
まず最初に知っておいていただきたいのは、全てのクリーニング店が店内でミシンを踏んでいるわけではないということです。お店には大きく分けて「工場直営店(ユニット店)」と「取次店」の2種類があります。
お店の奥に機械が見える「工場直営店」や、個人のオーナーがやっているお店の場合、その場や隣接する工場で直すことが多いため、細かい要望が通りやすく、料金も比較的安く抑えられる傾向にあります。一方、大手のチェーン店などの「取次店」は、お預かりした服を別のリフォーム専門工場へ配送して外注します。
そのため、往復の輸送コストがかかる分、料金が割高になったり、仕上がりまでに日数がかかったりします。看板に「リフォーム」の文字があるか、受付で「ここでお直ししていますか?」と聞いてみるのが一番の近道です。
ジーンズ800円、スーツ1200円?アイテム別・仕上げ方(シングル・ダブル)の「お直し料金」相場表
皆さんが一番気になるのは「いくらかかるの?」という点でしょう。お直し専門店よりもクリーニング店の方が安い場合もあれば、逆に外注費が乗って高くなる場合もあります。一般的なクリーニング店での裾上げ料金の相場をまとめましたので、参考にしてください。
| アイテム | 仕上げ方(専門用語) | 料金相場(税込) | 特徴 |
| ジーンズ・チノパン | たたき(三つ折り) | 800円〜1,200円 | 裾に縫い目が見える丈夫な縫い方。一番安くて早い。 |
| スーツ・スラックス | シングル(まつり縫い) | 1,200円〜1,600円 | 表に糸が出ないようにすくって縫う。技術が必要。 |
| スーツ・スラックス | ダブル(カブラ付き) | 1,500円〜2,000円 | 裾を折り返してスナップ留めをする。手間がかかるため高い。 |
| ジャージ・伸縮素材 | フラットロック | 1,500円〜2,500円 | 専用の特殊ミシンが必要。対応していない店も多い。 |
このように、ただ「裾上げ」と言っても、縫い方によって料金は変わります。特にジャージなどの伸びる素材は、普通のミシンで縫うと糸が切れてしまうため、特殊な機械が必要です。持ち込む前に電話で確認することをお勧めします。
「明日履きたい」は要注意!クリーニング店の裾上げにかかる平均期間と急ぎの裏技
「明日デートだから急いで直して!」と駆け込んで来られるお客様がいらっしゃいますが、残念ながらクリーニング店の裾上げは「即日仕上げ」に対応していないことがほとんどです。
通常、クリーニングとセットで依頼されることが多いため、洗って、乾燥させて、それからお直し工程に入ります。そのため、最低でも「5日から1週間」は見ておく必要があります。外注のお店なら10日ほどかかることも珍しくありません。
もしどうしても急ぎたい場合は、クリーニングをせずに「お直しのみ(プレスのみ)」で依頼できるか交渉してみてください。洗う工程を省くことで、数日早く仕上がる可能性があります。ただし、衛生面から「洗っていない服のお直しはお断り」というお店もあるので注意が必要です。
試着室がない店がほとんど!失敗しないための「股下採寸」と「クリップ留め」の持ち込みマナー
ここが最大の落とし穴です。お直し専門店にはフィッティングルーム(試着室)がありますが、クリーニング店には基本的に試着室がありません。レジの前でズボンを履き替えるわけにはいきませんよね。つまり、店員さんが長さを測ってくれることは期待できないのです。
失敗しないためには、自宅で長さを決めてから持ち込むのが鉄則です。一番確実なのは、家でそのズボンを履き、靴を履いた状態で鏡を見て、希望の長さに折り返し、「安全ピン」で留めてくること。
洗濯バサミやクリップだと、店に持っていく途中で外れてしまったり、受付で畳んだ拍子にズレたりして、とんでもない長さになってしまう事故が多発しています。もしくは、今持っている「長さが完璧なズボン」を一緒に持参し、「これと同じ股下の長さ(股下〇〇センチ)にしてください」と伝えるのもプロとしては非常に助かりますし、間違いがありません。
新品のジーンズをそのまま出すのはNG!プロが教える「縮み」計算と事前の「水通し」の必要性
新品のジーンズや綿パンツを買って、タグがついたまま「裾上げお願いします」と持ってこられる方がいますが、これは非常に危険です。綿や麻といった天然素材は、最初の洗濯で必ず「縮み」が発生します。
新品の状態でジャストサイズに裾上げをしてしまうと、家に帰って洗った後に2センチ〜3センチ縮んでしまい、「あれ?靴下が見えるくらい短くなってる!」という悲劇が起きます。これを防ぐために、新品のズボンは必ず家で一度「水洗い(水通し)」をして、縮ませきってから乾かした状態で裾上げに出してください。このひと手間を惜しむと、せっかくのお金が無駄になってしまいます。
「たたき」と「まつり」って何?知らないと恥をかくズボンの裾上げ用語と正しい選び方
受付で「仕上げはどうしますか?」と聞かれて、固まってしまわないように、最低限の用語を知っておきましょう。
「たたき」とは、ジーンズやチノパンに見られる、表からミシン目が一本線で見える縫い方です。「三つ折りステッチ」とも呼ばれ、丈夫でカジュアルな印象になります。「まつり」とは、スーツのスラックスや学生服に見られる、表に糸がほとんど見えない縫い方です。ビジネスやフォーマルな場面ではこちらが必須です。
ジーンズを「まつり」で縫うと変ですし、スーツを「たたき」で縫うと安っぽくなります。基本的には「元々と同じ縫い方で」と伝えれば大丈夫ですが、通販で買った切りっぱなしのズボンの場合は、用途に合わせて「カジュアルならたたき、フォーマルならまつり」と指定しましょう。
自分でやった「裾上げテープ」が剥がれた!糊(のり)がベタベタの状態でも店で直してくれる?
「100均の裾上げテープでやってみたけど、洗濯したら剥がれてベタベタになってしまった…」と、恥ずかしそうに持ってこられるお客様も多いですが、安心してください。私たちにとってはよくある案件です。
ただし、テープの糊(のり)が残っていると針が通らず、ミシンが壊れてしまうため、まずはその糊を除去する作業が必要になります。糊が綺麗に取れない場合は、糊がついている部分を切り落としてから縫うことになります。
つまり、テープを貼った位置よりも「少し短くなる」可能性があることを覚悟してください。「自分でやって失敗した」と正直に伝えていただければ、最善の方法を提案しますので、隠さずに相談してくださいね。
「あと2センチ伸ばしたい」は可能?折り目の跡(線)が消える素材と消えない素材の境界線
裾上げとは逆に「成長して短くなった子供のズボンを伸ばしたい」「中古で買ったスーツの裾を出したい」という「裾出し」の依頼もあります。技術的には、内側に折り返されている余り布(ヘム)があれば可能です。
しかし、問題は「折り目の跡」です。今まで裾だった部分は、プレスで押しつぶされ、摩擦で擦れているため、伸ばした時にどうしても「白い線」や「折り癖」が残ってしまいます。
ウール素材なら蒸気でかなり目立たなくできますが、綿やポリエステル、特に色の濃い生地や使い込んだ生地の場合、白い線は完全には消えません。「跡が残ってもいいから長くしたい」のか、「跡が残るならやめる」のか。受付で必ずそのリスクを確認し、納得した上で依頼するようにしましょう。

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