シルクを洗濯機で洗ってしまった!縮み・ゴワゴワを自宅で直す「髪のトリートメント」を使った緊急救済術

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「洗濯機の蓋を開けたら、お気に入りのシルクのブラウスが子供服のように小さくなっていた!」そんな光景を目にして、血の気が引いた経験はありませんか。

高価なシルク製品が一瞬の油断でクシャクシャの塊になってしまう。そのショック、痛いほど分かります。でも、まだ諦めてゴミ箱に捨てないでください。

シルクは人間の髪の毛と同じ「タンパク質」でできています。髪の毛が傷んだらトリートメントをするように、シルクにも適切な処置を施せば、ある程度の白さと柔らかさを取り戻せる可能性があります。

国家資格を持つクリーニング師であり、失敗洗濯のリカバリーを数多くこなしてきた私が、家庭にあるものだけでできる「シルクの緊急蘇生術」を伝授します。

絶望する前に確認!そのシルクが「まだ助かるか」「手遅れか」を見極めるダメージ診断

まず、落ち着いて現在の状態を確認しましょう。洗濯機事故によるダメージには、修復可能なものと、プロでも完全回復が難しいものがあります。もし、全体的に縮んでシワシワになっている、あるいは手触りがゴワゴワして硬くなっているだけであれば、生存率は高いです。これらは繊維の「並び」が乱れているだけだからです。

しかし、表面が白っぽく粉を吹いたようになっている、あるいは部分的に色が抜け落ちている場合は、繊維自体が物理的に破壊されている可能性が高く、完全な元通りは難しいかもしれません。

それでも、これから紹介する方法で「着られるレベル」まで回復させることは十分に可能です。

なぜ縮んで硬くなる?洗濯機の水流とアルカリ洗剤が引き起こす「繊維の絡まり」の正体

そもそも、なぜシルクは洗濯機に入れるとこれほど無残な姿になるのでしょうか。シルクの繊維は非常に細く、断面が三角形をしており、これが光を反射して美しいツヤを生んでいます。しかし、水に濡れると繊維が膨らんでキューティクルが開き、非常にデリケートな状態になります。

そこに洗濯機の激しい水流と回転が加わると、開いたキューティクル同士が引っかかり合い、繊維がギュッと絡まって収縮します。これが「縮み」の正体です。さらに、一般的な洗濯洗剤(弱アルカリ性)を使っていた場合、アルカリがタンパク質を溶かし、繊維を硬化させてしまいます。つまり、物理的な力と化学的な変化のダブルパンチを受けている状態なのです。

まだ乾かさないで!脱水後の「濡れた状態」こそが形を整える最初で最後のチャンス

ここからがリカバリーの本番です。もし今、洗濯機から出したばかりなら、絶対にそのまま干したり、乾燥機にかけたりしないでください。乾燥して繊維が固まってしまうと、もう形を変えることはできません。すでに乾いてしまっている場合は、もう一度常温の水(30度以下のぬるま湯)に優しく浸して、繊維を緩めてあげましょう。シルクの修復は、繊維が水分を含んで柔らかくなっている「濡れた状態」でしか行えません。

柔軟剤ではなく「ヘアトリートメント」を使え!髪の毛と同じタンパク質を補修する裏技

ゴワゴワになったシルクを柔らかくするために、柔軟剤を使おうとする方が多いですが、ここでは「ヘアトリートメント(またはコンディショナー)」をおすすめします。シルクは髪と同じタンパク質ですから、髪用の補修成分の方が繊維に馴染みやすく、しっとりとした質感を取り戻しやすいのです。

洗面器に水を張り、ヘアトリートメントをワンプッシュ(小さじ1程度)溶かします。そこにシルクの服を入れ、優しく30分ほど浸け置きしてください。繊維の絡まりが解け、指通りが滑らかになるのが分かるはずです。

アイテム 効果 特徴
ヘアトリートメント ◎(最適) タンパク質補修成分(シリコン等)が繊維をコーティングし、滑らかにする。
柔軟剤 〇(可) 繊維を油分で覆うが、シルク特有の「ハリ」より「フワフワ」になりすぎる場合がある。
お酢(クエン酸) ◎(ツヤ出し) アルカリに傾いた繊維を中和し、引き締めてツヤを出す。

縮みを物理的に伸ばす!半乾きの状態で縦横に引っ張る「テンション整形」の力加減

トリートメント液ですすいだ後は、軽くタオルで水気を取ります(雑巾絞りは厳禁です)。そして、ハンガーにかける前に、手で形を整える「整形」を行います。縮んでしまった繊維を、優しく、しかし意志を持って引っ張ります。縫い目を中心に、縦方向、横方向へと少しずつ伸ばしていきましょう。

特に袖口や裾、襟元は縮みが出やすいので念入りに修正します。「元のサイズに戻れ」と念じながら、全体を均一に引っ張るのがコツです。これをやるかやらないかで、仕上がりのサイズ感が劇的に変わります。

ツヤを取り戻す!アルカリに傾いた繊維を「お酢」で中和してキューティクルを整える方法

もし、手触りは戻っても「なんだか色がくすんでツヤがない」と感じるなら、pHバランスが崩れている証拠です。アルカリ性の洗剤によってキューティクルが開きっぱなしになっているのです。

これを閉じるために、最後のすすぎ水に「お酢」を大さじ1杯入れてください。酸性のお酢がアルカリを中和し(リンス効果)、開いたキューティクルをキュッと引き締めます。これにより、シルク本来の光沢が蘇ります。お酢の匂いは乾けば消えるので心配ありません。

プロでも修復不可能なダメージの境界線

残念ながら、生地の表面が白っぽくモヤがかかったようになっている場合、それは「スレ(白化現象)」と呼ばれるダメージです。摩擦によって繊維の束が裂け、ささくれてしまった状態です。これは「枝毛」と同じで、一度裂けてしまった繊維を元に戻すことは、プロの技術でも不可能です。

ただし、トリートメント成分やシリコン入りのスプレーを馴染ませることで、ささくれを寝かせて目立たなくすることは可能です。完全に元通りにはなりませんが、遠目には分からないレベルまで誤魔化すことはできるかもしれません。

仕上げはアイロンで決まる!完全に乾かしてからでは遅い「生乾きプレス」の黄金ルール

シルクのシワを伸ばす最高のタイミングは「生乾き」の時です。水気が少し残っている状態で、必ず「あて布(白いハンカチなど)」をして、中温のアイロンをかけてください。ここで重要なのは、アイロンのスチーム機能は使わないこと、そして霧吹きもしないことです。

シルクに水滴がつくと、そこだけシミ(ウォータースポット)になってしまうからです。生地自体が含んでいる水分を利用して、アイロンの熱で蒸発させる「蒸し焼き」のようなイメージでプレスすると、驚くほど美しく、ピシッと仕上がります。

クリーニング店なら元通りになる?プロの「修正プレス」ができること・できないこと

自宅での処置に限界を感じたら、私たちクリーニング店にご相談ください。私たちには、人型をした仕上げ機に服を着せ、内側から蒸気で膨らませてシワを伸ばす専用機械があります。これにより、全体的な縮みや型崩れは、家庭用アイロンよりも遥かに綺麗に修正できます。

しかし、先ほど申し上げた「スレ(白化)」や「色の抜け」に関しては、クリーニング店でも直すことはできません。あくまで「形を整える」ことが私たちの領分です。「洗ってしまったのですが…」と正直に伝えていただければ、その状態で最善の仕上げを提案させていただきます。

洗濯機でもシルクを安全に洗うための「ネット」と「洗剤」の絶対条件

懲りずにまた家で洗いたい、というチャレンジャーなあなたへ。シルクを洗濯機で洗うなら、条件を完璧に整えてください。まず洗剤は必ず「おしゃれ着洗剤(中性)」を使うこと。そして、ネットは「服のサイズにぴったり合った小さめのネット」を選んでください。ネットの中で服が動くと摩擦が起きるからです。

コースは「ドライコース」や「手洗いコース」を選び、脱水は1分以内、あるいはタオルドライに留めます。これらを守れば、洗濯機でもシルクの寿命を縮めずに付き合っていくことは可能です。

クリーニングママ

国家資格を持つクリーニングママ店主。プロの技×主婦の目線で、洗濯を「ラクで綺麗」にするコツを発信しています

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